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法人による米国不動産購入後の必要な手続

2020.6.19 アメリカ不動産

最終更新日 2025.3.10


令和2年税制改正により、個人による米国不動産所得の節税メリットは薄れました。今後は、日本法人として米国不動産を購入するパターンが増えてくると思います。その中で、日本企業がアメリカで不動産を購入した場合に現地で必要な手続きがあることをご存じでしょうか?

州外の会社による事業者登録

アメリカの各州では、州外で設立された会社がその州で事業を行う場合、州外会社(Foreign Corporation)としての事業者登録が必要になります。
日本企業のような外国会社だけでなく、アメリカの他州で設立された会社もForeign Corporationであり、事業者登録が求められます。
その州でのどのような活動が「事業を行っている」ものとみなされて、事業者登録が必要となるかについては、各州の州法で明確に定められているわけではなく、やや曖昧になっています
他方で、州に支店を設置する場合はもちろん、倉庫などの不動産を保有する場合、あるいは州内で従業員を雇用する場合などは、争いなく、事業者登録の対象である事業活動と考えられているようです。

従って、日本企業がアメリカのいずれかの州で不動産を取得するためには、その州で事業者登録を行わなければなりません。
事業者登録を行うためには、「Application for Authority」(ニューヨーク州)や「Statement of Designation by Foreign Corporation」(カリフォルニア州)などという名称の申請書を、州政府の担当部署に提出します。
申請書は所定のフォームに必要事項を記入して作成するのが一般的です。

申請の手数料は、多くの場合、数十ドルから数百ドルの間です(ニューヨーク州:60ドル)。いくつかの州では、申請書の提出をオンラインで行うこともできます。

さらに、日本企業が事業者登録の申請書を提出する場合、その企業の(日本での)登記事項証明書とその英訳が添付書類として求められることもあります(例:カリフォルニア州)。

年次(隔年)報告書、事業者登録

ある州で事業者登録を行った州外の会社は、通常、毎年ないし2年に一度、簡単な報告書の提出が要求されます。
日本企業がアメリカの州にある不動産を売却した場合など、州外の会社がその州での事業活動を終了した場合には、所定の登録終了届(ニューヨーク州:Certificate of Surrender of Authority)を州政府に提出することにより、事業者登録を完了することができます。

書面の提出が遅れることで手数料が増額してしまう州もありますので、ぜひお早目のお手続きをされることをお勧めします。
弊事務所では、上記手続に関するアドバイスを行っておりますので、ぜひご相談ください。

売却をした際の源泉徴収税

日本法人でのアメリカ不動産購入後、売却をするときにも留意すべき点があります。それは、FIRPTA(Foreign Investment in Real Property Act)に基づく連邦による源泉徴収制度です。これは、買主が売買価格の15%を源泉税としてIRSに納付し、その後、売主がIRSに対して還付手続きを行うという制度です。
このFIRPTAにより、売主は一定額について再投資をする機会を得られず、また還付手続のためCPAを起用する費用を負担することになります。

日本法人でアメリカ不動産を所有することで、アメリカのプロベートを避けることはできますが、上記の留意点があることは把握しておかれることをお勧めします。

 

法人宛小切手の換金手続

また、IRSから源泉税が還付をされる場合に、日本法人宛の小切手がIRSから振り出されることがあります。個人宛の小切手についての換金手続については、こちらで取り上げておりますが、法人宛の小切手についてはより換金が難しい状況となっています。

現状、日本国内では、日本法人宛に振り出されたアメリカ小切手の預入、換金を受け付けている金融機関はありません。そこで、アメリカの弁護士を起用することで解決ができる可能性があります。つまり、アメリカの弁護士は、アメリカ国内の金融機関でクライアントのための銀行口座CTA(Client Trust Account)を開くことができ、その口座への預入をすることで米ドルへの換金を行い、そこから国際送金で日本法人に送金をしてもらうことが考えられます。
もちろん、アメリカの弁護士との委任契約、手数料等が必要となりますが、日本国内だけではなくアメリカ本国に目を向けてもらうことで解決の道があるということを知って頂ければと思います。

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