海外銀行口座、解約したが…「残高を小切手で渡され、困っています」日本の銀行へ入金する方法は?
2023.2.21 アメリカ銀行口座
最終更新日 2025.3.10
最近の円安傾向もあり、海外銀行口座を解約して外貨を日本円に替えようという方が増えています。以前、カリフォルニアで作った銀行口座の残金を回収するためのアメリカ側の手続について、こちら(アメリカに残した銀行口座を解約・返金する方法 )で取り上げました。
重要なのは、日本に住む皆様が、最終的に米ドルを受け取れることです。
この点、海外銀行口座を解約して残高を米ドル小切手で発行され、日本の銀行窓口に持参しても、小切手の預入(海外の銀行への取立)を受け付けてくれず換金できないときがあるため、注意が必要です。今回は、この小切手について取り上げます。
アメリカの銀行口座の解約方法
- 銀行へのコンタクト
まず、そもそものアメリカの銀行口座を解約する方法ですが、弊所にご相談いただく方は、長年アメリカ口座を使っていないことが多いです。口座を開設したときの担当者の名刺を捨てていたり、登録住所を覚えていないこともあります。そのため、まずは銀行口座の存在を確認するため、銀行の窓口に連絡をすることから始まります。
連絡の方法は、最初はカスタマーサポートセンターへの電話がお勧めです。アメリカの銀行はメールでの一般的受付はしていないことが多いです。また、レターの送付は時間がかかるため、カスタマーセンターとのやり取りによりレターでのやり取りを要請された場合にのみ選択することが良いでしょう。 - 本人確認
アメリカの銀行の多くは、電話で本人確認が完了すると、銀行口座の情報を教えてくれます。銀行のカスタマーセンターは、口座番号や口座名義人の名前、生年月日、登録住所等を尋ねてきます。さらに、口座開設時に登録したパスポートの登録番号を聞いてくることもありますので、過去のパスポート番号を事前に把握しておくとよいでしょう。
解約をしていない限りは、口座を長年放置していたとしても口座がなくなることはないので、通常は口座が存在していることがこれで確認できます。ただし、一定期間放置をしていると、銀行が州政府に資産を移管してしまうことがあります。これはUnclaimed propertyとして、州政府からの回収作業が必要となります。この手続きについては、こちらをご確認ください。
なお、カスタマーセンターとの電話では、英語に自信がない方については、通訳を同席させることができますので、国際弁護士や通訳業者を入れることをお勧めします。 - 解約手続
本人確認が完了した後、こちらから銀行口座を解約したい旨を伝えます。通常、口頭で口座解約が完了することはありません。解約の意思をレターに記載して送るよう要求してくる銀行もありますし、そもそも残高をゼロにした上でないと解約ができないケースが多いです。
そこで、残高をゼロにする方法としては、口座に残っている米ドルをcheck(小切手)で発行してもらうか、wire transfer(国際送金)で回収するかの2つ方法があります。いずれにしても、残額をゼロにすることで口座が閉鎖(closure)されることになります。
アメリカでいまなお多用されるCheck(小切手)
上記で述べた小切手か国際送金のいずれかですが、もちろん、米ドル口座を日本で持っている方であれば、送金により直接アメリカの銀行から残金を回収するのが簡便で望ましいです。しかし、アメリカの銀行によっては送金を受け付けてくれないところもあります。特に、国際相続の案件では、日本の相続人に対する国際送金を受け付けない場合が多いです。
そのような場合、小切手による残金の受領という方法が選択されます。日本では小切手はほとんど使われなくなっていますが、アメリカでは未だに、小切手が各種支払の決済手段として使われています。アメリカでは銀行間送金の手数料が依然として高いということもありますし、小切手は手書きで金額等を書く古いやり方ではありますが、逆にその方がコンピューター上の入力ミスと比べて人為的ミスが少ないとも言われています。最近では、スマートフォンで小切手をスキャンすることで、小切手の預入(Deposit)をでき、小切手の取り扱いも便利になってきています。
日本国内で小切手を受け付けてくれる銀行
ここで問題になるのが、日本側において、アメリカの銀行から発行されたドル建て小切手の預入を受け付け、アメリカの金融機関を通じて取立をしてくれる日本の金融機関が少ないということです。
ここ数年、マネーロンダリング防止、偽造や変造のリスク回避といったことを理由に、海外発行小切手の取立業務を停止する日本の大手銀行が増えています。弊所が取り扱う国際相続案件でも、アメリカ側の弁護士から「遺産の分配を小切手ですると日本では換金できませんよね?」と聞かれる時もあります。
ただし、その受入、取立業務を行ってくれる金融機関が日本にもないわけではありません。米ドル口座を持っていなかった個人からの新規口座開設も、受け付けてくれる金融機関もあります。また、米ドルの取立が無事できて日本の口座に着金がされた後、デビットカードの決済機能のあるキャッシュカードが使えて、口座内の米ドルを海外の買い物等で使えるサービスを用意している金融機関もあります。
もちろん、口座開設ができるか、また海外の銀行への取立を行ってくれるかは、口座名義人の属性、小切手の金額、口座開設の目的・使途、小切手を発行した国や取立先の金融機関等、個別具体的事情によります。
国際相続案件を多く手掛ける弁護士であれば、事前に相続人の方から事情をお聞きして、金融機関に相談を行うことで、円滑に口座開設、遺産の分配を行うことができることもあります。小切手は、換金できる有効期限もありますし、日本人にとって特に不慣れだと思いますので、その取扱について早めに専門家に相談されることをお勧めします。