国際相続(8)~カリフォルニアの銀行口座をプロベート回避して遺族に相続させる方法
2022.9.27 国際相続
投資先としてのアメリカは、力強い経済成長やドルの強さに支えられた魅力的な投資先といえます。しかし、万一アメリカで財産を所有されている方が亡くなってしまうと、アメリカ特有の遺産相続手続である「プロベイト手続」によって、相続に多額の費用と数年間の時間を費やす可能性があります。
(プロベイト手続については、こちらをご覧ください。)
大幅な円安時期となっている昨今のような状況の中で、機動的に相続財産を売却したい、相続したドルを日本円に両替したいと思っても、数年間を費やしてしまっては、そのチャンスを逃すことになってしまいます。また、故人が数年前に亡くなったにもかかわらず、相続を未だに終えることができないというのも、残された遺族の方々にとって精神的負担が続くこととなります。
これまで弊所では、生前にTODやPODを設定することで、プロベイト手続を回避する方法をご紹介してきましたが、財産所有者が亡くなった後に、相続人として弊所に相談にいらっしゃるケースが多いです。例えば、以下のような相談です。
夫が日本で死亡しました。夫はカリフォルニアに赴任をしていた時期があり、その時にカリフォルニアの銀行で口座を開設していました。日本帰国後もそのままにしていて、今に至ります。銀行にPODの手続はしていません。大した金額は残っていないのですが、やはりプロベイト手続が必要になるでしょうか。もっと、早く銀行の残金を回収できる方法はないでしょうか? |
ここでの問題は、通常、PODをしていないと、銀行口座残高を相続するにはプロベイトが必要になりますが、カリフォルニア州でプロベイト以外の手続が用意されてないのか?という点になります。
その答えはYesです。カリフォルニア州では、少額の資産であれば、短期間で相続できる方法として以下2つの手続が用意されています。
- ①宣誓供述書による方法(Small Estate Affidavit)
遺産の合計価額が166,250ドル(2022年4月1日以降の死亡の場合は184,500ドル)以下の場合には、相続人による被相続人の死亡証明書等を添付した宣誓供述書の作成によって、プロベイト手続を回避して相続することが可能です。作成した宣誓供述書は裁判所を通すことなく、金融機関等に提出します。なお、被相続人の死亡から40日間はこの手続は利用できません。
※ただし、この手続は不動産の相続には使用できません。相続財産に不動産が含まれる場合、次の②の方法を検討することとなります。
- ②請願書による方法(Small Estate Probate Procedures)
遺産の合計価額が166,250ドル(2022年4月1日以降の死亡の場合は184,500ドル)以下の場合には、裁判所に不動産の鑑定書等を添付した請願書を提出することによってプロベイト手続を回避し、裁判所の決定によって不動産等の相続財産を取得することが可能です。なお、①と同じく、被相続人の死亡から40日間はこの手続は利用できません。また、①と比べると、他の相続人へ裁判所から通知を出す必要があるなど、時間を要するようです。
以上の手続は、プロベイト手続に比べれば、相続までの日数や費用を大幅に削減することができます。ただし、特に上記①については、対象銀行の窓口担当者との直接のやり取りが生じ、必要書類を様々求められます。そのため、日本国内に居住される相続人の方のみで行うには大変な困難が生じます。
弊所に相談に来られた方でも、歴史のある日本の法律事務所が前任として関与していましたが、日本からアメリカの銀行と連絡、折衝をするのに苦労して、ついに断念をして依頼者が困って弊所に来られたこともあります。前任の弁護士は最後、「もう1つ書類があると完了なのですが。。」とつぶやいていたそうです。弊所では、上記の手続を既に経験し、熟練したカリフォルニア州の弁護士と提携しており、迅速かつ適切なサービスを提供することが可能です。
以上、2つの手続をご紹介させていただきましたが、相続人の相続財産が166,250ドル(2022年4月1日以降の死亡の場合は184,500ドル)を超える場合には、やはりプロベイト手続が必要となります。もちろん、プロベイト手続についても弊所でサポートさせていただくことは可能です。安心・迅速にアメリカでの財産相続ができるよう、当事務所でお手伝いさせて頂きます。何かお役に立てることがございましたらご連絡ください。
文責:弁護士大木峻・弁護士中村優紀